1. 企業動向
(1)アップル
アップルは、低出力のパワーPCプロセッサを製造するPAセミ(PA Semi)を2億7000万ドルで買収した。関係筋の話
しをフォーブス誌が確認した。今回の買収は、PAセミのプロセッサをiフォンとiポッドに搭載していくのが目的と見ら
れている。PAセミは2003年にチップ業界ベテランのダン・ダバープール氏が設立した。現在の従業員は150人。 【4月23
日】
アップルの1 - 3月期決算は、大幅な増収増益となった。自社製パソコン「マック」の出荷台数が同期比51%増と大
幅に伸びたのが奏功した。製品別の出荷台数は、好調だったマックが229万台、携帯楽曲プレーヤ「iアイポッド」が
1064万台、携帯電話「フォン」が170万台となっている。一方、年末商戦期の10?12月期に比べてiポッドとiフォンの出
荷台数がそれぞれ52%減、26%減となっている。【4月24日】
アップルが米英で運営するオンライン販売サイトでiフォンが在庫切れとなっている。同社は、新製品投入前に旧型
機種の在庫を一掃することで知らているため、携帯の第3世代(3G)ネットワーク対応の新型iフォンが間もなく発売
されるという観測が強まった。アップルは技術者会議を6月に開くが、その際にスティーブ・ジョブス最高経営責任者
(CEO)が最新機種を披露すると予測するアナリストもいる。【5月13日】
サイスター(Psystar)は、アップルのOS「レパード(Leopard)」を搭載した格安パソコン「オープン・コンピュー
タ」を販売している。先月、最初にその機種が発表された時は、多くのハイテク関連サイトが詐欺として取り扱わなか
った。その後、最初の機種が出荷開始となり、著名なオンライン・ハイテク情報サイト、ZDネットのブロガーが実際に
そのパソコンを比較検証した。その結果、機種は問題なく動作したという。また、価格は399ドルと破格だ。しかし、
モニタ、キーボード、マウスはなく、機体自体にもファイアーワイヤー・ポートが搭載されていない。また、ブルート
ゥースおよびWiFiカードもなく、これらのパーツを追加していくと実際のコストは680ドル近くになるという。アップ
ルのミニマックに比べて80ドルほど割高だ。さらに、レパードの搭載が合法かどうか疑問視されている。また、アップ
ルがファームウェアを書き換えることによって、インストールができなくするようにすることも可能なため、どこまで
人気が出るのか疑問が残るところだ。【5月19日】
(2)シスコシステムズ
シスコの2 - 4月期決算はアナリストの予測を若干上回る増収となった。主力のルータ製品やスイッチ製品の販売が
売り上げを押し上げた。同期は増益となったものの、買収費用を計上すると5.4%減となっている。【5月8日】
(3)デル
デルは、これまで販売していたXPSラインのゲーム向けパソコン機種の大部分をなくし、ゲーム向けパソコン事業部
門を人気機種のエイリアンウェア(Alienware)に統合する。ブランドの統一によって同事業を強化していく考えだ。
エイリアンウェアは、デルが2006年に同名の会社を買収して自社製品ラインに組み込んだ。現在、全部で7機種が存在
している。エイリアンウェアの製品は発売当時、現在120億ドル規模と言われているゲーム・パソコン市場で急進して
いた。その一方でデルは、引き続き自社のXPSブランドも販促し続けた。その結果、エイリアンウェアの人気が落ちて
しまった経緯がある。【5月13日】
(4)ヒューレット・パッカード(HP)
HPは、同社の研究所で進行中の約150件の研究案件数を20 - 30件に大幅削減する方針を明らかにした。5月1日に所長に就任したプリス・バナーヒー氏の、同研究所では商業実用化の可能性が極めて低い研究案件を切り捨て、それと同時に最も有望と思われる研究開発に資源(研究者や予算)を集中させていく。HP研究所は現在、600人の研究者を抱え、年間約1億5000万ドルの予算があてがわれている。研究案件数の削減後も予算は縮小されない。また、人員削減の予定はなく、打ち切られる研究に従事していた従業員は、別の研究に異動する予定。
HP研究所の組織再編も行われ、役職階級が簡素化される。その結果、研究案件に関する最終報告は、世界各国の7ヵ所からバナーヒー氏に直接届くようになる。HP研究所は今後、(1)データ分析技術(2)クラスター・コンピューティング(3)アナログ・コンテンツのデジタル化(4)モバイル・コンピューティング(5)環境に優しいハイテク機器の開発、を戦略的な主要研究分野として位置づけていく。【4月24日】
HPは、ネット接続ゲートウェイ機器「HPメディアスマート(MediaSmart)」経由で視聴できるユーチューブ用動画コンテンツを作る。視聴者は、HPメディアスマート製品とリモコンを使って、ユーチューブの動画を高精細テレビ(HDTV)で再生できるようになる。HPとユーチューブはこれまで、ユーチューブの動画をフル・スクリーンのHDTVで視聴できるようにするために共同研究を行ってきた。HPメディアスマートはまた、複数のパソコン上に保存されている様々なフォーマットの写真や動画、音楽を一括管理して、大画面テレビで簡単に再生できるようにする。【5月8日】
HPは、EDSを総額139億ドルで買収する。同社にとっては2002年に220億ドルでコンパック・コンピュータを買収して以来の大型買収となる。買収手続きは今年下半期に終了する見込み。2007年度のHPの売上高(1043億ドル)のうち、ITサービス事業は166億ドルを占めていたが、EDS吸収によってそれが2倍以上に膨らむ見込みだ。また、買収によってHPが最大手のIBMに大きく迫ることになる。EDSは各国政府や企業を顧客に持つ。2007年の売上高は221億ドル、純利益は7160万ドル。【5月13日】
(5)IBM
IBMは、高速メモリ開発大手のラムバスから「マルチ・プロトコルSerDes(シリアル/デシリアライザー)セルのライセンスを取得した。同製品は、先端ネットワーク、サーバ、ASIC(特定用途向け集積回路)アプリケーション用チップ。IBMは同製品を45ナノメートル・シリコン・オン・インシュレータ(SOI)技術に実装していく。【4月24日】
IBMのワールド・コミュミティ・グリッド(WCG)とワシントン大学は、世界中のパソコンを活用することで栄養価の高い米(コメ)を開発するプロジェクト「栄養価の高い米を世界に」を発足した。このプロジェクトは、世界的な食糧危機対策の一環として推進されており、点在する約100万台のパソコンを利用して米を原子レベルで研究する。具体的にはワシントン大が開発した3次元モデリング・プログラムをグリッド上で実行し、米の構成要素であるタンパク質の構造を分析する。さらに、収穫高や味、栄養価の向上や害虫への耐性でどのタンパク質が貢献するかを特定する。従来のシステムの処理能力では200年以上かかると言われていたが、グリッド・コンピューティング技術を使うことによって2年以内で完了する見通しだ。処理能力は現存するスーパーコンピュータで3番手と同じ程度になるという。同プロジェクトを率いる同大のラム・サミュドラーラ准教授は、「新種を5年以内に農家に供給できる」と自信を示している。【5月16日】
(6)インテル
インテルは、スーパーコンピュータ(スパコン)メーカーのクレイ(Cray)に自社のプロセッサを提供していく。また、両社は、スパコン「キャスケイド(Cascade)」を共同開発していく。同製品は2012年に完成する予定。開発には、米国防高等研究計画局(DARPA)が資金を提供している。クレイはこれまで、アドバンスド・マイクロ・デバイシズ(AMD)のプロセッサを使ってきた。同社は、今後も引き続きAMD製品を使う計画だ。クレイにとって、インテルとの提携は、IBMやヒューレット・パッカード(HP)やサン・マイクロシステムズといった競合大手に対抗する強力な後ろ盾になると期待される。【4月29日】
インテルは4月11日に、ホームグリッド・フォーラム(HomeGrid Forum)を設立し、全ての電化製品に対応する家庭内通信技術規格の開発に本格的に着手した。規格が策定されば、利用者はネットからパソコン、テレビ、デジタル楽曲プレーヤまで全てをケーブルや電話回線、電線に接続でき、1つの機器から別の機器にデータを転送できるようになる。対応製品の出荷は2009年後半になる見込みだ。同フォーラムには、テキサス・インスツルメンツ(IT)ほか、独半導体メーカーのインフィニオン・テクノロジーズ(Infineon Technologies)やパナソニックが参加している。当面は、協賛企業から会費によって運営される。 【4月30日】
インテルは、メモリチップ・メーカー世界最大手のサムスン電子およびTSMCと提携した。同3社は、現在使用している直径12インチ(300ミリメートル)のシリコン・ウエハーの代わりに18インチ(450ミリメートル)のウエハーを使ってメモリチップ生産量を2倍以上に引き上げていく。2012年までには最初の製造ラインが稼働する予定だ。3社はさらに、半導体製造の業界団体「国際SEMATECHマニュファクチャリング・イニシアチブ(ISMI)」を通じて、同業界全体に製造規格の標準化を促進していく。今後は、半導体メーカーのみならず、半導体製造機器メーカーが製造工程の規格で合意しなければならない。また、工場建設費用などのコストも課題となっている。 【5月5日】
インテルは、次世代超小型プロセッサ「Nehalem(開発名ネヘイレム)」を予定通り、今年下半期に発売すると発表した。オッテリーニ社長兼最高経営責任者(CEO)が年次株主総会で明らかにした。同氏によると、今後は、最新の45ナノメートル超微細加工技術で製造したプロセッサの供給を増やしていく計画だ。【5月22日】
(7)マイクロソフト
マイクロソフトは、複数のデジタル機器に散在する写真や文書といったデータをネット経由で同期化する技術「ライブ・メッシュ」の実用化に向けて、限定試験を開始した。実用化されれば、携帯電話で撮った写真を数分後に自宅のデジタル写真立てに表示したり、友人と共有する文書が変更された場合に登録しているパソコンを使って最新内容をすぐに確認できる。マイクロソフトは、米国の1万人に限定して同技術を試験提供する。当初の利用環境はウィンドウズ搭載パソコンのみだが、数ヵ月後には利用環境を携帯電話機やそのほかのネット接続機器に拡大する。また、年内には別途試験を実施する計画だ。【4月24日】
マイクロソフトは、6月末で打ち切る予定のウィンドウズXPの販売期間を延長する可能性がある。同社のスティーブ
・バルマー最高経営責任者(CEO)が訪問先のベルギーで示唆した。同社は2007年1月にウィンドウズ・ビスタの発売
を開始。これに伴い、XPの提供を今年6月末に打ち切る方針だった。しかし、XPの信頼性が高いことから、顧客の方で
販売サポート延長を求める要望が強まっている。一方、同社はすでに、開発途上国支援の一環で開発された超低価格パ
ソコンに対するXPの提供期間を2010年6月まで延長すると発表している。【4月25日】
マイクロソフトの1 - 3月期決算は、売り上げが横ばいのまま、減収となった。前年同期の業績がウィンドウズ・ビ
スタ関連の販売で好調だったため、今年は逆に落ち込む結果となったようだ。売上高の内訳は、ウィンドウズ関連が前
年同期比24%減の40億2500万ドル。「オフィス」部門も2%減の47億4500万ドルだった。一方、好調だったのは、オン
ライン・サービス事業とXボックスを含む娯楽機器事業部門で、それぞれ40%増の8億4300万ドル、68%増の15億7600
万ドルとなった。【4月25日】
マイクロソフトのヤフーを買収交渉は決裂した。その結果、マイクロソフトは、オンライン・ビジネス業界において
の存在感を強めるために新たな戦略を見つけなければならなくなった。米メディアによると、同社は今後、ヤフー買収
を実現させる選択肢を残しつつも、ヤフー以外のネット企業との提携を目指していくと考えられている。英紙によると
、すでにAOLが新たに事業提携をマイクロソフトに打診しているという。また、マイクロソフトの銀行家がソーシャル
・ネットワーキング・サービス(SNS)大手フェイスブックに買収を打診していることも明らかになっている。ただし
、フェイスブック側の意向は不明。一方、ヤフーも、株価を上昇させる代替策を新たに模索する必要が出てきた。この
まま株価が低迷すれば、投資家からの圧力が強まる一方で、人材の流出にもつながる可能性が指摘されている。【5月5
日】
マイクロソフトは、韓国の現代起亜自動車向けに音声起動ソフト「マイクロソフト・オート」を開発していく。同社
はすでに、フォード・モーターと提携し、音声によって携帯電話操作やデジタル楽曲を再生できる「シンク(Sync)」
システムを開発している。現代とフォードを合わせると、800万台以上の車への搭載が可能となる。競合社には、車載
通信システム「オンスター(OnStar)」を手掛けるゼネラル・モーターズ(GM)のほか、ジョンソン・コントロールズ
、QNXソフトウェア・システムズがある。【5月7日】
マイクロソフトは、同社製携帯楽曲プレーヤ「ズーン(Zune)」向けにテレビ番組の提供を開始した。同機器ではこ
れまで音楽ビデオのみ配信されていた。新規サービスでは、ゼネラル・エレクトリック(GE)傘下NBCユニバーサルの
800本以上の番組を購入できる。【5月8日】
マイクロソフトは、超低価格ラップトップ・パソコン(ULPC)向けとして、パソコン・メーカーに対し、ウィンドウ
ズXPホーム・エディションの大幅割引を実施する。Linuxへ対抗するのが狙い。ただし、同社は大幅割引の条件として
、ULPCの画面サイズを最大10.2インチ、ハード・ドライブ容量を最大80ギガバイトに制限した。また、メモリやプロセ
ッサに関しても規定を設けている。ハードウェアを制限することで、ビスタ搭載機種との差別化を図りたい考えだ。価
格は、中国やインドといった新興市場で販売されるULPC搭載機種向けに26ドル、そのほかの市場向けを32ドルと設定し
ている。さらに、市場開発合意(Market Development Agreement)を締結したメーカーには、最大10ドルの割引を適用
する。【5月9日】
マイクロソフトは、無料の宇宙観測ソフト「ワールドワイド・テレスコープ」の提供をネット上で始めた。ソフトは
、ハッブル宇宙望遠鏡や各地の天文台で撮影された膨大な天体写真を活用している。利用者は天体望遠鏡を操るような
感覚で星雲を拡大したり、天文学者の説明付きで天体観測できる。新サービスは科学教育促進が目的で、利益は考えて
いないという。一方、競合社のグーグルも、宇宙観測ソフト「グーグル・スカイ」を提供中だ。【5月14日】
(8)グーグル
グーグルは、IBMとクラウド・コンピューティングを推進する共同事業に着手した。最終的には、消費者と企業が使
用する世界的なサーバ網を構築することを目指す。最初のプロトタイプは、すでに昨年10月にマサチューセッツ工科大
学(MIT)とスタンフォード大学、カーネギー・メロン大学に提供されている。システムはLinuxベースでゼン・システ
ムズ(Xen Systems)の仮想化技術(バーチャライゼーション)やグーグルのファイル・システムに基づくオープンソ
ースの「アパッチ・ハドゥープ(Apach Hadoop)」から成る。 両社は手始めに、クラウド・コンピューティングを
通じてワード・プロセッサ「グーグル・ドックス(Google Docs)」や IBMのカレンダー・システム「ロータス・シン
フォニー(Lotus Symphony)のような基本プログラムを提供する。最終的には「チボリ(Tivoli )や「ポスチーニ
(Postini)」のような高度なセキュリティおよび管理ツールも提供していく考えだ。【5月2日】
2008年4月の米国内ウェブサイト利用者数で、グーグルが1億4108万人を獲得して初めて首位に躍進した。2位に転
落したヤフーの利用者数は1億4061万人にとどまった。調査会社コムスコアが発表した。コムスコアは、グーグルの躍
進の要因は検索エンジンとユーチューブによると分析している。【5月16日】
グーグルは、米国内向けに健康情報サービスサイト「グーグル・ヘルス」を立ち上げた。同サイトは、米国の主要な
薬局、医師団体、医療試験機関ともリンクしており、地域や診療科目別に医師を検索できる。また、患者に対し薬の服
用時間を通知したり、薬物の相互作用の危険性を警告するサービスもある。【5月20日】
(9)オラクル
オラクルは、同業のBEAシステムズ買収計画について、欧州委員会から独禁法上の承認が得たのを受けて、買収手続
きがすべて完了したことを明らかにした。買収金額は85億ドルだった。これにより、オラクルはミドルウェアを強化し
、先行するIBMの追撃を目指していく。また、重複する部門における人員削減が行われる可能性が高い。【4月29日】
オラクルは、ユタ州ウエスト・ヨルダンにデータセンターを建設する。同センターを利用して自社のオン・デマンド
・ソフト事業を拡大するのが狙い。敷地面積は20万平方フィートで、最初に2億8500万ドルを投資する。また、オン・
デマンド・ソフト事業のサポートほか、研究開発および顧客サポートも行っていく計画だ。同事業部門は、今年1 - 3
月期に前年同期比23%増の1億7400万ドルの売り上げを計上している。同事業部門の売り上げは総売上の3%となって
いる。【5月19日】
主な企業の決算報告:
企業名 |
四半期売上高 |
前年同期比 |
四半期純益 |
前年同期比 |
アップル |
75.12億ドル |
42.7% |
10.45億ドル |
35.7% |
シスコシステムズ |
97.91億ドル |
10.4% |
23億ドル |
9.4% |
マイクロソフト |
144.5億ドル |
0.4% |
13.07億ドル |
-11.0% |
2.パーソナル・コンピュータ、携帯機器とソフトウェア(OS)
(1) 携帯機器端末でデジタル・テレビ放送を受信するモバイル・デジタル・テレビ(DTV)サービスの加入料金によ
る売り上げは、2012年に世界で120億ドルに達する見通しだ。調査会社イン・スタット(In-Stat)が報告した。同社の
報告によると、市場が成長する一方で、モバイルDTV標準規格の策定には時間がかかり、当面は、互換性のない規格や
仕様が乱立する市場環境が続く見通しだ。現在、対立する2大規格としてDVB-Hとメディアフロー(MediaFLO)がある
が、今夏の北京五輪開催に向けて中国で導入が進む無線デジタルTV網「中国モバイル・マルチメディア放送(CMMB=
China Mobile Multimedia Broadcasting)」が同国で普及する可能性がある。
同社のアナリストによると、米国では、2009年2月に地上波テレビ放送のデジタル化が予定されているのにとも
ない、放送事業者を中心にモバイルTVのデジタル化が進むという。ただし、2009年は引き続き、アナログ方式モバイル
TV加入者がデジタル方式サービス加入者数を上回ると見られている。【4月24日】
(2) 1台のコンピュータ上に複数のOS環境を構築できる仮想化技術(バイチャーライゼーション)が携帯電話にも導
入されようとしている。仮想化技術を使うことによって、他社の機器の機能を取り込むことができるほか、より多くの
機能を低価格で導入できるという利点がある。現在、市場を開拓する新興企業として、バーチャルロジック
(VirtualLogic)のほか、トランゴ・バーチャル・プロセッサーズ(Trango Virtual Processors)やグリーン・ヒル
ズ・ソフトウェア(Green Hills Software)、オープン・カーネル・ラボズ(Open Kernel Labs)、ウィンド・リバー
・システムズ(Wind River Systems)などがある。携帯電話機メーカーもそれらの企業に関心を示しており、例えば、
バーチャルロジックは、モトローラから出資を受けている。
また、携帯電話のソフト開発にも仮想技術は必要だ。これまで、デベロッパーはそれぞれのOSに対してソフトを
作らなければならなかったが、仮想技術によってOSに関係なく新機能を取り込める。また、仮想化技術はさらに、携帯
電話機で使用するチップの数を少なくとも2つに減らすことができるという。専門家によると、少なくとも電話機1台
あたり5 - 10ドルのコストを削減できる見通しだ。【4月24日】
(3) オープンソース・ソフトの主力企業らは、2008年第1四半期にベンチャー・キャピタル(VC)から多額の資金を
獲得した。一方で、同分野の新興企業は記録的な資金不足に苦しまされている。調査会社451グループが報告した。同
社の調査結果によると、オープンソース分野へのVC投資額は、同期だけで2億400万ドルに達した。投資額は前年同期
比2倍に達し、2006年第4四半期の1億9400万ドルという最高記録を塗り替えた。その一方で、今年第1四半期におけ
る同分野の新興企業に対する初期投資額は、全体の5%以下の900万ドルにとどまった。451グループは、今年における
オープンソースへのVC投資総額が、昨年の3億2400万ドルを超えると予測している。【4月25日】
(4) ソニー・エリクソンは、JavaMEとアドビのフラッシュ・ライトを統合する開発ツール「プロジェクト・カプチン
(Project Capuchin)」を発表した。これにより、フラッシュを使ってゲームやソーシャル・ネットワーキング・サー
ビス(SNS)を作成して、Javaが持つWi-Fiやブルートゥース、eコマースへの接続機能を利用できるようになる。現在
、携帯電話機の多くはフラッシュに対応しているが、コンテンツの再生しかできず、携帯電話機に付属するアプリケー
ションや機能と情報データをやり取りできなかった。【5月1日】
(5) スマートフォン機器を開発するリサーチ・イン・モーション(RIM)は、マルチメディア機器の販売業者として
世界大手のブライトポイント(Brightpoint)と提携した。北米以外での自社のスマートフォン「ブラックベリー
(Blackberry)」販売網を拡大するのが狙い。ブライトポイントは、27ヵ国に営業拠点を置く。ノキアを主要顧客とし
ているほか、台湾の携帯電話機メーカーであるHTC製品の最大手販売業者でもある。今年は1億台のブラックベリーを
販売する計画だ。【5月2日】
(6) 発展途上国へパソコンを普及しようと努めている非営利団体のワン・ラップトップ・パー・チャイルド(OLPC)
は、独自開発の廉価機種「XO」にウィンドウズを搭載することでマイクロソフトと合意した。OLPCは、これまで、無料
OSのLinuxを採用していた。一方、ウィンドウズを使える知識が子供の将来に役立つだろうという考えから、ウィンド
ウズを搭載するなら大量購入を検討するという発展途上国政府の声もあがっていた。そこで、一度は決裂したマイクロ
ソフトと交渉した経緯がある。ウィンドウズXPを搭載したXOは、来月から4 - 5ヵ国で限定的にテスト導入される。ま
た、Linux版も継続される。【5月16日】

3.インターネットとメディア・ビジネス
(1) 2008年第1四半期に23社の仮想世界(バーチャルワールド)に総額1億8420万ドルの資金が投じられた。調査会
社バーチャル・ワールド・マネジメントが報告した。同社の調べによると、世界で投入された資金のうちおよそ3分の
1が若者層をターゲッットにした仮想世界が対象となっている。最も投資額が多かったのが上海のエバースター・エン
タテインメント(Everstar Entertainment)が運営する9you.comで1億ドルを調達している。投資したのは、シンガポ
ールを拠点する投資会社。次いで、タイムワーナーなどが加わるコンソーシアムが提供する仮想世界「ガイア・オンラ
イン(Gaia Online)」で1200万ドルだった。また、サンフランシスコを拠点とするマルチゲームの「アウトスパーク
(Outspark)」が1100万ドルを調達している。【4月25日】
(2) メディア大手コックス・エンタプライゼス(Cox Enterprises)は、広告ネットワークを構築しているアディフ
ァイ(Adify)を3億ドルで買収する。アディファイは“バーティカル広告ネットワーク”というニッチ市場を構築し
ている。顧客は、同社の技術を使って、自社独自の広告ネットワークを構築することができる。例えば、「ゲイ・アド
・ネットワーク」は、同性愛好者をターゲットにした広告ネットワークだ。また、スポーツ愛好家が集まるブログをタ
ーゲットにしたネットワーク「ヤードバーカー(Yardbarker)」もある。買収後も同社は、独立企業として運営される
。【4月29日】
(3) グーグル傘下のオンライン広告配信大手ダブルクリックは、自社のモバイル広告配信システム「ダブルクリック
・モバイル」を他のモバイル広告ネットワークと統合した。統合したのは、アドモブ(AdMob)、ミレニアル・メディ
ア(Millennial Media)、グーグルのアドセンス。パブリッシャーがモバイル広告を直接販売するのはいまだ難しく、
こうしたネットワークを利用したいという要望が強い。そうした中、複数の企業が互いのネットワークを統合すること
によって、売り上げ増加もさながら、モバイル広告市場の活性化につながると期待されている。また、ダブルクリック
は、自社のモバイル広告配信技術を他社のネットワークに解放していく計画だ。【4月30日】
(4) セズミ(Sezmi Corporation、旧ビルディングB)は、テレビを映画やネット動画と容易に融合させる初の「テレ
ビ2.0」技術を開発した。セズミが開発したフレックスキャスト(FlexCast)動画配信技術は、術地上波テレビのデジ
タル放送を既存のブロードバンド基幹網と組み合わせる動画配信技術。セズミの技術を採用するブロードバンド接続サ
ービスでは、ケーブルテレビ(CATV)番組や映画、ネット動画も配信できる。また、好きな番組を観たい時に視聴でき
るオン・デマンド・サービスも含まれる。例えば、家族で使用する場合は、それぞれの利用者がホームページのような
スクリーンを持つ。さらに、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の要素も盛り込まれる。加入者は、家
族や友人との間でプレイリストを共有でき、コミュニティ単位による番組や広告の視聴率測定に貢献する。【5月5日】
(5) オンラインDVDレンタル大手ネットフリックス(Netflix)は、自社のストリーミング配信サービス向けセットト
ップ・ボックス(STB)の販売を開始した。同社は、高速ネット接続を通じて1万作以上の映画やテレビ番組をストリ
ーミング配信する。サービスは、1年前から提供しているが、最新映画を視聴できないほか、パソコン以外の機器では
容易に利用できないという難点があった。STBを導入することで、利用者数を伸ばしたい考えだ。価格は99.99ドル。製
造は、シリコンバレーの新興企業ロク(Roku)が請け負う。【5月20日】
(6)楽曲配信サービスのナップスター(Napster)は、全ての楽曲をMP3フォーマットで提供するダウンロード・サー
ビスを開始した。楽曲プレーヤの制限がなく、ダウンロードした楽曲は、どの機種でも再生できる。現在、全ての大手
レコード会社と契約してMP3ファイルを提供しているのは、同社とAmazon.comのみ。アップルは現在、EMIグループと同
様の契約を結んでいるが、他の楽曲はAACフォーマットとなっている。価格は1曲あたり99セント。アルバムは1枚に
つき9.95ドルとなっている。同社は今回の新規サービスでアップルを追随したい考えだ。しかし、専門家は、iポッド
のユーザーがナップスターのサービスに鞍替えすることを疑問視している。iポッドとiチューンズ・ミュージックスト
アのソフトの互換性が非常にいいのが理由だ。一方、直接競合するAmazon.comに対しては有利との見方がある。
Amazon.comは、楽曲販売にそれほど本腰を入れていない。また、楽曲の数でも、ナップスターが600万曲を揃えている
のに対して、Amazon.comは500万曲にとどまっている。【5月20日】

4.電子商取引とITサービス
(1) オンライン百貨店Amazon.comの2008年第1四半期(1 - 3月)決算は、売上高が前年同期比37%増の41億3500万
ドル、純利益が29%増の1億4300万ドルとなった。商品の値引きや積極的な海外展開が奏功したようだ。さらにドル安
効果も加わった。その結果、北米での売り上げが31%増の21億2600万ドルと好調だったのに加えて、海外販売44%増の
20億900万ドルとなった。【4月24日】
(2) ハウツー系のコンテンツを提供するクアムットのビジネスモデルが注目を集めている。同サイト(Quamut.com)
では、フットボールの基本からウェブサイトの構築まで様々なハウツー系のコンテンツを配信している。こうしたサイ
トは以前から存在し、eHow、HowStuffWorks.comなどの新興企業からAbout.comのような広範囲にわたる情報を提供する
サイトまで無数に存在する。しかし、同社はコンテンツを無料で提供する一方、同じ項目をコンパクトにまとめたカラ
ー版を有料でダウンロード提供している。例えば、“寿司の作り方”は画面上では15ページにわたって紹介されている
が、有料版は6ページのカラーページにまとめられている。価格は3ドル。クアムットはまた、ラミネートしたハウツ
ー・シートを大手書籍チェーンのバーンズ&ノーブルでも販売している。その種類は1000種におよび、各6ドルとなっ
ている。情報知識を確実にするためにおよそ721人のフリー・ライターを雇っている。網羅するトピックの数は実に7
万におよぶという。【4月28日】
(3) Amazon.comは、ニューヨーク州の新州法が違憲であるとして、ニューヨーク州最高裁判所に同州を訴えた。2008
年4月に州議会で可決された同州法によって、州外のオンライン小売店には州売り上げ税の徴収が義務づけられる。こ
れがAmazon.comの提供するアフィリエイト・プログラム「アソシエイツ・プログラム」に影響を与えるという。
Amazon.comでは、提携していない全米のウェブサイト・オペレーターがそれぞれのウェブサイトでリンクを張って
Amazon.comを宣伝している。これらのサイトは売り上げに応じて、コミッションを受け取る仕組みだ。ところが、ニュ
ーヨーク州の新法では、それが州内におけるビジネス勧誘にあたると見なされる。その結果、同州政府は、Amazon.com
は消費者からニューヨーク州売り上げ税を徴収し、それをニューヨーク州に納税する義務があると唱えている。これに
対して、同社は、同法が同社を不当に標的にしたものと主張している。今後は、同法の無効と法務経費の支払いを求め
ていく。【5月5日】
(4) 小企業がeコマースなどを取り入れて事業を回復させている。例えば、ニューオーリンズの骨董品店シルクロー
ド・コレクションは、ハリケーン「カトリーナ」の襲来後、観光客や地元客の激減で経営が傾いたが、ヤフーとAT&Tが
開いた小企業向けeコマース講座の受講をきっかけにウェブサイトを立ち上げ、オンライン販売で危機を乗り切った。
現在は観光情報ブログやビデオもウェブサイトに加えつつある。最近では、ヤフーやイントゥイット、グーグル、マイ
クロソフトをはじめ、多くのIT企業が中小企業向けにウェブ・ホスティングを含む様々なサービスを提供するようにな
った。サービスも多岐にわたり、中には無料や月40ドル程度のものもある。独自サイトのデザインやネットを使った宣
伝および販促はもちろん、会議やセミナーも開けるほか、経理、出荷、在庫管理もハイテク・ツールで処理できる。調
査会社IDCによると、米国では現在、小企業のウェブサイト所有率は53%に達するという。景気低迷にもかかわらず、
中小企業による今年のハイテク支出は前年比6.2%増の820億ドルと予想され、企業市場全体の4%を上回る見通しだ。【5月15日】
(5) 米銀行大手のバンク・オブ・アメリカとウェルズ・ファーゴは、オンライン自動決済(クリアリングハウス=
automated clearinghouse payment)サービスを手がける合弁会社パリテール・ソリューションズ(Pariter Solutions
)を設立する。クリアリングハウスの取り扱い機関としては全米最大となる。2社はそれぞれの機能を統合することに
よってクリアリングハウス業務の効率化を図っていく。バンク・オブ・アメリカは、オンライン支払いの受付銀行とし
ては最大で、ウェルズ・ファーゴが2番手となっている。【5月16日】

5.半導体とハードウェア技術
(1) ネットテレビ(IPTV)技術を手がけるLOVエンジニアリング(LOV Engineering)は、テレビ番組ストリーミング
放送のための携行機器を披露した。機器は2種類で、一般放送向けの「LOVボックス・エクスストリーム(LOV Box
Xtreme)」と、高精細(HD)放送向けのLOVボックスHDエクストリーム(LOV Box HDXtreme)の2種類がある。機器は
いずれも、6時間持続するバッテリかAC電源で動作する。入力端子としては、IEEE1394、HDSDI、HDMI、BNC、RCA、ス
テレオXLRオーディオ入力が使える。実際に同社がラスベガスで開催された全米放送局協会(NAB)の見本市で行ったデ
モでは、毎秒512キロビットのネット接続と50インチのプラズ・マテレビを使ってストリーミング放送を披露した。そ
の結果、わずか2 - 5秒のレイテンシー(遅延)で放送される画質の良さがかなりの評価を得たようだ。【4月28日】
(2) シリコンバレーの新興企業SUNRGIは、太陽光発電を石炭火力発電並みのコストで商用化できる技術「集光型太陽
光発電」を開発した。従来の4倍に相当する2000倍の集光レンズを使用することによって、既存の太陽電池パネルより
もはるかに小さな規模でより大きな電力を生産できるのが特徴だ。コストは1キロワット時(kWh)あたり7セントを
見込んでいる。これは、通常の火力発電とほぼ同じコストだ。太陽電池パネルの生産開始は、2009年半ばになる予定。
一般世帯向けには3年以内に販売する計画だ。【4月29日】
(3) 米半導体工業会(SIA)は、3月の世界半導体販売額が前月比3.4%増の211億ドルになったと発表した。米国以
外でパソコンや携帯電話の売り上げが伸びたことが奏功した。また、1 - 3月期の世界半導体の売り上げは前年同期比
3.8%増の634億ドルとなった。ただ、昨年第4四半期の668億ドルに比べて5.1%減少した。【5月1日】
(4) 新興企業のジーパワー(ZPower)は,ノート型パソコン(ラップトップ)バッテリの持続時間を大幅に延ばす技
術を開発している。同社が開発しているのは、銀亜鉛バッテリで、ラップトップの使用時間を40%延長できる。また、
リチウムイオン・バッテリのように可燃液体の炭酸ジメチル(DMC)を使用せず、水をベースとしているため不燃性だ
。加えて、バッテリの容量が減るのが遅いという特徴もある。すでにメーカーが採用を決定しており、同社製バッテリ
を搭載した機種が8月にも市場にお目見えする予定だ。【5月2日】
6.その他(通信、政府・議会動向など)
(1) スプリント・ネクステルとクリアワイヤーは、無線広帯域接続事業の合弁会社クリアワイヤーを設立した。同
社を通じて米国で初めて全米を網羅するワイマックス(WiMAX)通信網を構築する。新会社の株式51%をスプリントが
、27%をクリアワイヤーが保有する。そのほかグーグルやインテル、コムキャストといった大手数社が残り22%にあた
る株式を保有する。同社は総額145億ドルの資金を調達したことになる。現時点で合弁会社の事業モデル詳細は不明だ
が、ワイマックス通信網を全ての端末とサービスに開放するいわゆる「オープン・アクセス」になると見られている。
これにより、携帯機器メーカーは、電話会社と事前に契約を結ばなくても携帯通信機器を自由に製造でき、新製品の開
発に拍車をかけると期待されている。また、消費者は、従来のように電話会社が提供する通話プランと端末を一括購入
する必要がなく、好みの端末を購入し、スカイプのような通話時間制限のないIP電話サービスを利用できるようになる
。【5月8日】
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