転職歴が
次のチャンスを生んだ
「Let’s make a difference!」
彼女のウェブサイトを開くと、まずドーンと目に飛び込んでくるそのスローガン。“さぁ自分の力で変えよう!”そんなポジティブなメッセージのもとに、子どもたちを対象にしたサマーキャンプや講演会など、日本とニューヨークを中心に様々なイベントを企画・運営しているのが「ミステリオ」のディレクター、寺尾のぞみだ。
彼女についてまず興味深いのが、その経歴。アメリカ大使館、フジテレビ、伊藤忠商事、そして昨年まで勤続したモルガン・スタンレー証券と、華麗なる大企業の名が連なる。転職がプラスとされるアメリカならまだしも、終身雇用が”当たり前”のような時代だった一昔前の日本での話だから、そういう意味でも異色の経歴といえよう。
「英語を使う仕事に就きたくて大使館に入ったのですが、大学出たての私はキャピキャピしていて、使いにくかったのでしょう。人間関係で辛いことが多く、今から考えれば“我慢が少し足りなかったかな”という気もしますが、結局2年弱で退職。次にテレビ局でADとして再スタートするわけですが、今度は一転、奴隷のような生活(笑)。時間は不規則だし、環境はスパルタだし。そこで初めて怒鳴られることも経験しましたよ。最終的に体を壊してしまい、そこにいたのも約3年ほどでした」。
フジテレビを退職後の彼女は悩んでいた。「英語もキャリアも中途半端。好奇心がありすぎて、どこにフォーカスしてよいのかわからない」。子どもの頃から「日本はダサイ」と思っていた彼女はずっとアメリカに憧れており、「やっぱり行くしかない!」と一念発起。親にはバケーションと嘘をついて、ニューヨークで就職活動を始めた。そして間も無くして、伊藤忠アメリカに社長秘書として採用される。「想像とは違った完全な日本社会でしたが、当時出会った方々には温かく育てていただき、今でもとても感謝しています」。
その後結婚、夫の転勤に伴って退職、帰国となった。時代は80年代後半、バブル経済に沸く日本では、バイリンガルは引く手数多。『ジャパン・タイムス』の求人広告欄では金融業界がやたらと騒がしかった。バイリンガルとしての職歴こそあれど、金融に関しては全くの素人だった彼女。しかし「いろんなことをやっているから雇いたい」と採用してくれたのが、外資系のモルガン・スタンレーだった。彼女が中途半端と悩んでいた転職歴が、新たなチャンスを生むことになった。 |