シングルマザーでのNY生活
シズカさんが、はじめてニューヨークの地を踏んだのは1987年。駐在員の妻として海外生活のスタートをきった。しかし、根っから好奇心、向上心旺盛のシズカさん。専業主婦としての生きがいが見出せず、抑制された人生に疑問を持つ。そして、離婚。二人の幼い子供を抱えて、シングルマザーとしてニューヨークでの自立を強いられる。
「8年間専業主婦でしたし、当時は合法的に働けるビザもなく、仕事探しは困難でした。子育てをしながらの就職活動。大変な時期でしたね」と当時を振り返る。たまたま、日本で習っていたダンス講師とのコラボレーションで、スタジオ開設/運営を手がけることになる。しかし、ニューヨークでのビジネス事情に疎い素人商売で、トラブル続き。雇った建築家のライセンス不備が発覚したり、NY市への必要書類申請が欠如していたりと、初歩的なミスが積み重なる。最終的には閉鎖、訴訟に追い込まれ、精神的、金銭的に大きなダメージを受ける。挙句の果てには、ストレスが起因の内臓病にも次々と悩まされ、心身ともにどん底まで突き落とされることとなる。
「貯蓄を切り崩し、明日のことを心配して生きる生活。とにかく大変でした。でも自分で選んだ道だから、ここであきらめたら負けだ。子供の人生も狂わせてしまっている以上、責任を取って結果を出すべきだ、と自分に言い聞かせました。『子供たちのためにも、限界までやるしかない』と必死でしたね」。
オフブロードウェイ・ミュージカルの「ブルーマン・グループ」へ、夢を買うつもりで行った小さな投資からの回収を生活資金にあて、葛藤の日々を続けていくシズカさん。言葉では語り尽くせない苦悩やストレスがあっただろう。しかし、今振り返れば「この時に頑張れたこと」が、今の人生の大きな糧になっているという。
旦那との運命的な出会い
その後、彼女は、引越業者の経理、病院の受付、弁護士アシスタントなど色々な職業を点々とする。ただ、何をやっても「何かが違う…」という気持ちがついてまわる。しかし、ちょうどその頃、現在の旦那である皮膚科医ロバート・バーンスタイン氏と運命的に遭遇し、めでたく再婚。三人目を出産し、新しいリズムを少しずつ取り返していく。
「『人間だから誰でもミステイクはする。でも、やり直しはできるはずだ。失敗を認め、そこから成長していけばいいんだよ』という旦那からのアドバイスにすごく励まされました。『失敗=恥=敗北』という日本的な観念を払拭でき、気持ちが楽になりましたね」とシズカさん。
再度、人生を見つめ直し始めたのもこの頃。どん底時代からのトラウマがあったので、とにかく、手に職をつけ、自立できる仕事を模索。「英語で勝負するのはやはり難しい。自分には何ができるのか?」という自問自答を、日々繰り返した。
「当時、生き生きと仕事をする美容師の友達がいて、『人をキレイにする仕事って素敵だな』と実感しました。私自身も昔からエステに通っていましたし、人をポジティブにハッピーにする『美容の仕事』なら、私でもできるかもしれない、とピンときたのです」と、シズカさん。
思いついたらすぐにアクションにうつす行動力と熱意がシズカさんの強み。早速スクールに通い、コスメトロジーとエステシャンのラインセンスを取得。1995年からは、旦那のオフィスの一室を借りて、日本人相手のケミカルピールを中心にエステティックサービスを開始した。その後、脱毛へのニーズの高まりに対応して、エレクトロジストの資格も取得。天性的な才能とスキルを併せ持つシズカさんの評判はあっという間に広がり、ついに、1999年、「East Meets West (東洋と西洋の融合)」のコンセプトを掲げ、シズカニューヨークのデビューが実現する。
和と洋の美を融合した新感覚のデイスパ
「シズカ・ニューヨーク」は、日本特有のホスピタリティ精神を大切にしたデイスパだ。茶室をモチーフにしたお店作りで、日本独特の文化と真心を伝えながら、最先端のスパサービスを提供している。現在、顧客の7割は米国人で、スタッフは18名。近年は、スパに専門医を迎え入れ、ニーズの高いボトックスやレーザー、コラーゲン注入などのサービスも開始した。また、2006年2月には念願のオリジナルスキンケアも新発売。日本の富士山の伏流水と和漢植物ハーブ&真珠プロテイン配合の多機能のアンチエージング・スキンケアとして、日米で話題を呼んでいる。
「現状に満足せずに、常に目標を立てること。その際に、夢物語で終わらないよう、1年後、3年後と、中短期に実現可能な目標を立てることが大切だと思います。いきなりジャンプアップするのは難しい。一歩ずつ、確実に進んで行くのが私のやり方ですね」とシズカさん。いくつになっても学ぶことは無限にある。現状に満足して傲慢にならない。常に前向きに、向上心を持つ。この姿勢が彼女の成功のバネになったといえようか。
ファミリーからの温かいサポートが活力
人に奉仕するサービス業は全く苦にならないというが、経営者だから、人材管理や事業促進などでの精神的なストレスは常につきまとう。スパオープン当時は、挫折しそうになったこともあるという。
「『覚悟して始めたんでしょう?』という旦那の一言でハっと我に返りましたね。息子たちからのサポートも大きかった。『普通のママは、キャリアを作ってから子供を生む。でもママの場合は順番が逆なんだ。だからガンバルしかないよ』と言われ、新しい勇気がわいてきました」
優しい家族のサポートが、シズカさんを突き進める原動力となったのかもしれない。
「エステを通じて、少しでも世の中に貢献したい。人をキレイにすることで、その人のポジティブな人生作りにお手伝いできれば嬉しいです」
母、妻、実業家、セラピストとしてのバランスを上手に図り、したたかに生きるシズカさん。苦労を乗り越えてきた女性だけが持てる精神的な余裕を感じさせる魅力的な女性だ。
そして、彼女は、今、この瞬間も進化し続けている。生き生きとした目が、それを語っていた。
【2007年5月】
(取材/文/写真 吉藤美智子 *トリートメント施術写真を除く) |